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第2回 建物の熱収支をイメージする

 第1回では、家庭で使われているエネルギーの中身を考えました。今度は「建物を出入りする熱エネルギー」について考えます。熱収支なんてタイトルだとちょっと面倒くさい話のようですが、建物の熱の出入りをどうすれば快適に過ごせるのか、どんなふうに空気と熱をデザインしていけばよいのか、そういうことをイメージしてもらおうという目的です。

 さて、下のグラフは建物の熱収支を表した模式図です。木造住宅の室温の変化を見ていきます。グラフの縦軸は温度、横軸は1日24時間です。縦軸のなかほどにある点線は、仮に20℃としておきましょう。模式図なので、20℃そのものには特別な意味はありません。


室温変動1

グラフ@について
 最初のグラフ@は、旧来の木造住宅です。南におおきな窓があり、断熱・気密性能はあまり高くない、ほとんど木と紙で出来ている木造の建物です。こういった木造住宅の冬季は、日中太陽によって得られた熱で昼間は暖かいですが、夜間は屋外に逃げて、ぐっと寒くなります。一日の室温の変動幅は大きく、熱しやすく冷めやすい室内環境であることがわかります。


室温変動2

グラフAについて
 @の家が断熱するとどうなるでしょうか。日中得られた熱を夜間逃さないようにするため、グラフ@の家を断熱・気密化しました。グラフ@と比較すると、熱の逃げが少なくなったため、室温は全体的に上昇しています。日中は十分な室温が得られていますが、夜はやはり冷え込み、一日の室温の変動幅自体はグラフ@とあまり変わりません。


室温変動3

グラフBについて
 もし昔の農家のように土間があるとか、コンクリート造とか、熱を蓄える能力が大きければどうでしょうか。グラフAの家に、今度は"蓄熱"の要素を考えます。グラフBの家では、日中の余分な熱は蓄えられることになります。夜間、外気温が低下すると、日中蓄熱された熱が放出されるため、一日の室温変動幅は縮小していきます。また室温が一番高くなるピークの時間も、夕方よりにずれており、日中の集熱が有効に蓄熱されていることがわかります。


室温変動4

グラフCについて
 壁、床など、家の各部位のうち熱が一番多く逃げるのが窓です。特に外気温が低下する夜間には多くの熱が窓から逃げていきます。夜から朝に断熱戸を閉める=窓の性能を変えることで夜間の熱の逃げを抑制すると、グラフCのように1日の温度変化をさらに少なくすることができます。こまめに障子やカーテン、雨戸などの断熱戸を開閉することの効果です。


 

 どうでしょうか。なんとなくイメージできましたか。こういった考え方を「クライマティック・デザイン」と呼び、建物の応答特性を調節したり、昼と夜の切り替えをすることで、暑すぎたり寒すぎたりといった熱環境を緩やかな変化に整えていこう、すなわち、建物の「集熱(日射取得量)」・「蓄熱」・「断熱気密」の3要素のちょうどいいバランスを探そうよということです。

 では具体的にどうすればいいのかというと、まず最初にすることは「その土地の気象を知る」ことです。その土地の気象がどんな特徴をもっているのか。一日の温度差はどのくらいあるのか。日射量はどのくらいあるのか。建物は外界とつねに応答しているわけですから、まずはその外界を知ることから始まるわけですね。研究所のサイトでは、「気象概要を知る」と題して日本各地の気象概要を掲載しています。月ごとにまとめた数字を基にしているので少しわかりにくいかもしれませんが、お住まいの地域と訪ねたことのある地域の気象を比べるなどして、どんな特徴があるか探してみてください。

[ LAST UPDATE Sat, 2009-08-08 16:00 ]
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