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2009.08.21
第4回"Q値"のおはなし vol.2

 建物全体の断熱性能を表すがの "Q値" とすれば、もう一段階細かい話として壁や天井など建物の部位別の熱性能を表すのが "K値(熱貫流率)" です。QとK、似ていますがちょっと違います。

 用語の使用法としては、Q値の場合は、
「こののQ値は ×× W/m2h℃」
(※m2は延べ床面積)

 それに対してK値の場合は、
「このの K値 は ×× W/m2h℃」
(※m2は壁の面積) とか、
「このの K値 は ×× W/m2h℃」
(※m2は窓の面積) となります。

 QとKの関係でいえば、壁・床・天井・窓の各K値にそれぞれ面積を掛けて積算した合計に換気による損失を加えて述べ床面積で割ったもの、それがQ値です。

 Vol.1で述べたように、同じ断熱仕様にした同じ床面積の家でも、平面の形や窓面積が異なればQ値は異なってきます。例えば下記のような同じ床面積(9m2)を持つ2つの家があるとします。

    

 高さは同じ、仮に窓がなくて全部壁だったとします。ここで外壁の長さを比べてみましょう…Aの12メートルに対しBは20メートルと約1.7倍の長さです。ということは同じ断熱仕様にしたとしてもBの壁から逃げる熱量はAの1.7倍になりますから、床面積が同じならQ値はBの方が大きくなります。

 このように同仕様でも形によってQ値に違いが生じます。でも環境のためだけに家をつくるわけじゃないし『どうしても凸凹したい!』という要望もあるかもしれません。その場合ランニングコストを抑えたいときは断熱性能をAの2倍程度にすれば逃げる熱量はAとほぼ同量になります。また多く逃げる分を自然エネルギーでまかなうという考え方もあります。

 次に建物から逃げる熱はどんな部分からどんな割合で出て行くのか考えます。一般的な住宅ではおよそ窓30%、換気30%、壁20%、天井と床で20%です。窓は日射を採り入れることもしますから熱を入れやすく出しにくい低放射ガラスを使ったり、夜は障子やカーテンを閉めたりすれば効果的。換気が24時間化した最近では熱交換型換気扇も有効です。

 自然エネルギー研究所が開発したソフト『クリマテ』は、部位毎のK値を簡単に算出することができます。これを使って壁と窓のK値を比較してみましょう。

       

壁:
(1) 構造用合板 12ミリ
(2) グラスウール24K 100ミリ
(3) 石こうボード   9.5ミリ
(4) クロス貼     →K=0.348 W/m2h℃

グラスウールを (5) 50ミリ+ (6) 半密閉空気層50ミリだと →K=0.571

 このように断熱材の厚みが半分だと壁からの熱の逃げ方は1.6倍にもなります。断熱の重要性がわかっていただけるのではないかと思います。

 

では窓はどうでしょうか? 下記は引き違いの目安です。(YKK技術資料より)

アルミ/単板ガラス(ex.YKKフレミング)・・・6.51 W/m2h℃
アルミ/複層ガラス(ex.YKKフレミング)・・・4.65
樹脂複層ガラス(ex.YKKプラマード)・・・3.49
アルミ・樹脂複合/複層ガラス(ex.YKKエピソード)・・・3.49
アルミ・木複合/複層ガラス・・・(ex.エピソードウッド)・・・2.33

 しかしいくら性能が良くなったといっても断熱材を入れた壁と比べるとまだ10倍以上のK値です。一般的に壁面積に対する窓比率は20%前後ありますからここで重点的に対策を取ると断熱効果は一気に高まります。断熱は一部だけを強化しても結局弱い部分からより多く逃げることになるので、窓を中心に全体的にレベルアップしていくことをお勧めします。またアルミサッシのアルミ部分は熱が伝わりやすいため冬期結露の原因になることが多く、木製建具は気密性にやや難があるものの熱が伝わりにくいという点で優れているといえます。

 

 下記の具体例で数値の感覚をつかんでいきましょう。実際に東久留米に建つN邸です。

N邸(Q=3.1)
所在地:東京都(IV地域)
敷地面積:127.28m2

延床面積: 85.40m2(1F 41.82 m2, 2F 43.58 m2)

断熱仕様:
  壁(K=0.33)…
   木摺下地モルタル25ミリ

   グラスウール16K 100ミリ
   プラスターボード 9.5ミリ
 窓(K=5.6)…木製建具 単板ガラス 
 天井(K=0.36)…ラワン合板 5.5ミリ
 グラスウール16K 100ミリ

 木製建具であることを除けば比較的一般的な仕様や規模ではないかと思います。それでもIV地域の省エネルギー基準値(2.7)はオーバーしています。なかなか厳しいですね。では各部位を省エネルギー基準の仕様基準を満たすように断熱を変更するとQ値はどのように変化するでしょうか。

 壁の断熱材16Kから24Kに、窓を木製単板をアルミ複層に、天井の断熱材を16K100ミリから24K/160ミリに

 結果はQ=2.5となり省エネルギー基準(2.7)に適合しました。このようにごく一般的なプロポーションの住宅(特別に凸凹していたり窓が多かったりしないもの)であれば、仕様基準に適合するよう設計すれば性能基準もOKといってよいでしょう。

 さてここまでは計算上のQ値について考えてきました。次回はこれを実測に基づき算出されたQ値と比較しながら、Q値とは何かを考えていきます。

 

[ LAST UPDATE Fri, 2009-09-04 13:58 ]
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